7時20分、ワタシはフラれた男の家で座っている。カーテンは閉まったままだけど、窓の形にうっすらと明るい。居間、というよりはリビングという小ぎれいさ。こう見ると広いもんだね、と独り言ちる。彼はもう仕事に行った。ワタシも学校行かなきゃ。

ワタシが初めて好きになった人だった。ワタシの小さく凝り固まった世界を、いとも簡単に変えた人だった。世界が、明けた。そんな気がしてた。

7時43分、 ワタシはまだフラれた男の家で座っている 。特別だった世界も、今日でおしまい。でもね、おかげさまでワタシは新しくなれたような気がしている。感謝してるよ。ワタシ良い子だもん。そんなふうに思ってもいいよね。

なんかもらっていこう。そうだ、この部屋からなんかもらっていこう。最初に目についたCDを手に取った。「ウォークマンって名前はSONYが作ったものでさ」彼の声がする。物知りな彼。よし、これももらっていくね。最後にもう少しだけ、ワタシに教えてほしい。

家を出た。太陽があつくてまぶしくて、少しクラクラする。まだ開ききらない目をこらして、もらってきたウォークマンのスイッチを探る。思ったよりゆっくりと開くそれに、もらってきたCDを入れる。こういうのって引きずってる女みたいに見えるのかな。ワタシ良い子だったもん。構うもんか。

CDがくくっと音を立て回り始める。耳元で曲が流れ始める。ワタシは少し早足になる。明けた街を、前のめりに歩く。
昨日までワタシと繋がっていた世界はもうないけど、また何かを信じることってできるのかな。そんなのまだわかんない。気持ちは行ったり来たりだけど、それでも歩いてたら進んでるんだと思う。まずはワタシが、ワタシを信じてあげよう。そんな風には思える。

8時21分、遠くに学校が見えてくる。
「良いものもらったかも」ウォークマンを開くと、CDのタイトルがキラキラと光った。『信じ続けることで失うものなんて何もないよ』 今度ははっきりと見えた。


軽い感じではなく、あー夏始まったな。って思ってます。 確かな感じがしてます。

竹中駿介

Blueglue「信じ続けることで失うものなんて何もないよ」リリースパーティ

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